サイエンスラボ α版(試作)ver1.1.0-alpha34 — 内容は未レビューです。間違いを見つけたら、お知らせください(はじめに・免責)。
サイエンスラボ / 電磁気学 / 電流の正体 / 電磁気学の数式(ベクトル解析)

電磁気学の数式(ベクトル解析) v0.7・0 章の微分・偏微分・積分・線積分に「動く絵」(偏微分・線積分は 261014)、4 章 div・8 章 ガウス/ストークスに「動かせる 3D の絵」を追加(261013。3 章 grad・5 章 rot は 261012)・運営者の確認は未

マクスウェルの方程式は、∇(ナブラ)・grad・div・rot という「場の微分」の言葉で書かれています。このページは、その言葉を、図(動かない絵と、0 章の微分・偏微分・積分・線積分の動く絵、3 章 grad・4 章 div・5 章 rot・8 章 ガウス/ストークスの動かせる 3D の絵)と、途中を省かない式と、数値で計算した例で、1 つずつ確かめるための前提知識のコーナーです。マクスウェルの方程式そのものの解説は、マクスウェルの方程式の解説コーナーにあります。

図は、すべて、このサイトのコード(vectorfig.js)が、ページに書いた式から計算して描いたものです。図の数値(矢印の向き・流束・循環)と、ページの例の数値は、自作の検算プログラム(非公開) で、解析的な答えと一致することを確かめています。動く絵(vectoranim.js。0 章の微分・偏微分・積分・線積分の 2D の絵、3 章・4 章・5 章・8 章の 3D の絵)の数値(割線の傾き・長方形の和・勾配・向きごとの傾き・箱の流束・div・rot・循環・羽根車の角速度)も、自作の検算プログラム(非公開) で、解析的な答えと一致することを確かめています。スマホでも、指でなぞる・つまむで動かせます。

0. おさらい: 微分・偏微分・積分・線積分・面積分

このページの式は、微分と積分の言葉で書かれています。1 章から先で式が出てきたとき、「この記号は何をしているのか」が分かるように、先に、高校の数学(微分・積分)から順に、図と数値で確かめます。高校の微分・積分(0-1・0-3)は、知っていれば飛ばしてかまいません。ただし、偏微分(0-2)・線積分(0-4)・面積分(0-5)は、高校では、ふつう習わないので、読んでから 1 章へ進むのがおすすめです(式の中の記号は、式のすぐ下に「ここでの記号」として、毎回、書いてあります)。

図の中の数値は、ページのコード(calcfig.js)が、式から計算したものです。本文の数値は、その計算と一致することを、自作の検算プログラム(非公開) で(手計算の答えとも)確かめています。

0-1. 微分: 「変化の割合」

f(x) = x² の点 x = 1(白い丸)。そこから横に h だけ進んだ点との割線の傾き(紫 h = 1、水色 h = 0.5)は、h を小さくすると、点 x = 1 でのグラフの接線(琥珀)の傾き 2 に近づく。

動かして確かめる

h のスライダー(または紫の点のドラッグ)で、h を小さくしてみてください。紫の割線(グラフ上の 2 点を通る直線)が、琥珀の接線(1 点でふれる直線)に重なっていきます。「▶ h を 0 に近づける」で、自動で小さくしていきます。

(JavaScript が使えると、ここに、動かせる絵が出ます。上の静止図で読めます。)

① 定義

グラフの 1 点での「傾き」を、2 点を通る直線(割線)の傾き [f の増え方]÷[x の増え方] から、2 点を近づけて決めます。これが微分係数 f′(x) で、「x が少し増えたとき、f が、どれだけの割合で増えるか」を表します。

② 意味

f′(x) = df/dx は「f の単位 ÷ x の単位」です(例: 位置 x[m]を時間 t[s]で微分すれば、速度[m/s])。「limh→0」は「h を限りなく 0 に近づけたとき、その式が近づく値」。d は「ごく小さな変化」の記号で、df/dx は、割り算に見えますが、1 つの記号(f を x で微分したもの)として読みます。

③ 具体例(途中を省かずに)

  1. f(x) = x² に、x = 1 を入れて、割線の傾きを書く(f(1 + h) = (1 + h)²、f(1) = 1)。
  2. (1 + h)² を展開する: (1 + h)² = 1 + 2h + h²(展開の公式)。分子の 1 と −1 は消える。
  3. 分子の 2h + h² を h でくくって、分母の h と約分する: (2h + h²)/h = 2 + h(h ≠ 0 のあいだは、約分してよい)。
  4. h を 0 に近づけると、2 + h は 2 に近づく。よって f′(1) = 2。

数値で見ると、割線の傾きは、h = 1 で 3、h = 0.5 で 2.5、h = 0.1 で 2.1、h = 0.01 で 2.01。いつも 2 + h になっています(上の 2 行目)。

④ よくある間違い・公式(高校の復習)
  • 接線の傾きは、1 点の値です。割線は 2 点を通る直線で、h が 0 でない間は「平均の傾き」です。
  • 公式(高校): (xn)′ = n xn−1(例: (x²)′ = 2x。x = 1 で 2。上の結果と同じ)・(定数)′ = 0・(c f)′ = c f′(定数は外に出せる)・(f + g)′ = f′ + g′・商の微分: (f/g)′ = (f′g − f g′)/g²・積の微分: (f g)′ = f′g + f g′。以後の式展開で使うたびに、どの公式かを、横に書きます。

0-2. 偏微分: 「ほかの変数を止めて、1 つだけ動かす」

電場や電位は、位置 (x, y, z) の 3 つの変数で決まる量です。f(x, y) のように変数が 2 つ以上あるとき、1 つだけ動かして、ほかを止めたときの変化の割合が偏微分です。記号は、微分の d の代わりに ∂(「ラウンドディー」と読む)を使います: ∂f/∂x は「y を止めて、x だけを動かしたときの、f の変化の割合」。

動かして確かめる

(JavaScript が使えると、ここに、動かせる絵が出ます。下の具体例で読めます。)

地図の上の白い点を動かすと、y を止めた切り口(橙)と、x を止めた切り口(紫)の曲線が変わります。それぞれの切り口は、変数が 1 つだけの関数なので、0-1 の微分がそのまま使えて、その接線(琥珀)の傾きが ∂f/∂x・∂f/∂y です。表では、割線の傾き(差分)で求めた数値と、偏微分の式の値が一致することを確かめられます。はじめの関数 x²y で、点を (1, 2) に動かすと、下の具体例の 4 と 1 になります。

具体例

f(x, y) = x²y を、点 (1, 2) で。∂f/∂x は、y を定数として扱って、x で微分します: y は定数なので外に出せて、y·(x²)′ = y·2x = 2xy。点 (1, 2) では 2·1·2 = 4。同じように、∂f/∂y は、x を定数として扱って、x²·(y)′ = x²。点 (1, 2) では 1。

  • 2 階の偏微分は、順番を入れかえても同じ(偏微分が連続なら。このページで使うのは、すべてこの場合): ∂²f/∂x∂y = ∂²f/∂y∂x。上の例では、どちらも 2x(∂f/∂x = 2xy を y で微分しても、∂f/∂y = x² を x で微分しても 2x)。7 章の恒等式の証明で使います。
  • 図つきの説明(「x だけ動かす」「y だけ動かす」)は、2 章の図(V = x² + y²)にあります。

0-3. 積分: 「細かく分けて足す」

f(x) = x² の、x = 0 から 1 までの下の面積を、8 本の長方形(幅 Δx = 1/8、高さは各区間の左端の f)で近似。細い長方形の面積の和(水色)は、正確な面積 1/3 より少し小さい。

動かして確かめる

長方形の本数 n を増やすと、長方形の和が、正確な面積に近づいていきます(表の「差」)。高さを「中点の f」にすると、少ない本数でも、ずっと近くなります。

(JavaScript が使えると、ここに、動かせる絵が出ます。上の静止図で読めます。)

① 定義

区間 [a, b] を n 個に細かく分け、各区間の幅 Δx と、そこでの f の値を掛けた「細い長方形の面積」を足し合わせ、n → ∞ としたものが定積分 ∫ab f(x) dx です。

② 意味

∫ は、和(sum)の頭文字 S を縦に伸ばした形の記号で、「足す」ことを表します。dx は「ごく小さな幅 Δx」です。つまり、「f(x) × 小さな幅」を、a から b まで足す、という意味で、グラフの下の面積を表します(f が負のところは、負の面積)。f の単位 × x の単位になります(例: 速さ[m/s]を時間[s]で積分すれば、道のり[m])。

③ 具体例(足していく様子)

長方形の本数 n を増やすと、和は、4 本で 0.21875、8 本(図)で 0.2734、10 本で 0.285、100 本で 0.32835、10 万本で 0.333328 と、1/3 ≈ 0.3333 に近づきます。足し算を無限に繰り返さなくても、次の定理で、正確な値が出ます。

f の微分の積分は、両端の f の差(微分積分学の基本定理)。x² の積分には、微分して x² になる関数 x³/3 を使います((x³/3)′ = x²):

④ 注意
  • 図の長方形は「左端の高さ」を使ったので、x² が右上がりの関数だと、少し小さくなります。本数を増やすと、この差は 0 に近づきます(本数に反比例して小さくなる: 4 本で 0.115 の差、100 本で 0.005 の差)。
  • 以後の章では、この基本定理を、「E = −∇V を道に沿って積分すると、電位の差になる」(0-4)という形で使います。

0-4. 線積分: 「道に沿って、細かく分けて足す」

渦の場 F = (−y, x)(反時計まわりに回る)。同じ始点 (0, 0) から同じ終点 (1, 1) まで、道が違うと線積分が違う: 折れ線(琥珀)は 1、まっすぐ斜め(紫)は 0。
勾配の場 F = ∇V = (2x, 2y)(V = x² + y²)。折れ線も斜めも、線積分は 2 = V(1, 1) − V(0, 0)。道によらず、始点と終点の V の差だけで決まる。

動かして確かめる

(JavaScript が使えると、ここに、動かせる絵が出ます。上の静止図で読めます。)

道を N 個の小片に刻み、各小片で「場 F と、小片の進み Δr との内積」を足したものが、表の「刻んだ和」です。N を増やすと、正確な値(式で手計算した値)に近づきます。場と道を切りかえて、渦の場では道によって値が変わり、勾配の場では始点と終点だけで決まる(円を 1 周すると 0)ことを、確かめてみてください。「逆向きにたどる」で、正確な値の符号が逆になります。

① 定義

0-3 の積分は、まっすぐな x 軸に沿って足しました。線積分は、曲がった道 C に沿って、各点で「場 F と、道の小さな進み Δr との内積」を足し合わせたものです。内積 F·Δr = FxΔx + FyΔy + FzΔz は、「道の向きの成分の F × 進んだ長さ」。力 F が物体を道に沿って動かすときの仕事に当たります。

2 行目は、道を、s = 0 から 1 まで動く 1 つの変数で表した形です(r(s) は、s のときの位置。dr/ds は、s が少し増えたときの位置の変化の割合)。実際の計算には、こちらを使います。

② 意味と向きの約束

  • 向きがある: 道を逆向きにたどると、Δr の符号が逆になるので、線積分の符号が逆になります。
  • ∮(積分記号に○)は、始点と終点が同じ閉じた道に沿った線積分で、「循環」と呼びます。このページでは、反時計まわり(+z から見て)を正の向きにします(5 章・8 章のストークスの定理の向きの約束)。
  • 電場の線積分は電位差になります。電場 E が単位電荷を動かす仕事が ∫E·dl(dl は道の小さな進み)です。

③ 具体例(途中を省かずに)

渦の場 F = (−y, x) で、(0, 0) から (1, 1) まで、折れ線と斜めの 2 通りの道で計算します。F·dl = −y dx + x dy です(Fx = −y、Fy = x。dx・dy は、道に沿った x・y の小さな変化)。

  1. 折れ線の第 1 辺は、x 軸に沿って (0, 0) → (1, 0)。y は 0 のままなので、y = 0 と dy = 0 を入れると、足す中身(被積分関数)は −0·dx + x·0 = 0。足しても 0。
  2. 第 2 辺は、(1, 0) → (1, 1)。x は 1 のままなので、x = 1 と dx = 0 を入れると、−y·0 + 1·dy = dy。y が 0 から 1 まで足すと 1。
  3. 斜めの道は、s = 0 → 1 で x = y = s と書ける(dx = dy = ds)。足す中身は −s ds + s ds = 0 なので、積分も 0。

数値積分(2 万分割)でも、折れ線 1・斜め 0 です(図の左)。半径 1 の円を反時計まわりに 1 周すると、F·dl = dθ(θ は回った角)で 2π ≈ 6.283。渦の場の線積分は、道によって変わり、閉じた道で 0 になりません。これが、5 章の rot(回転)が 0 でない、ということの意味です。

一方、勾配の場 F = ∇V = (2x, 2y) では、F·dl = 2x dx + 2y dy(折れ線: 第 1 辺で ∫01 2x dx = 1、第 2 辺で ∫01 2y dy = 1)で、合計 2。斜めでは、2s ds + 2s ds = 4s ds なので ∫01 4s ds = 2。どちらも V(1, 1) − V(0, 0) = 2 − 0 = 2 です。

1 行目は、0-3 の基本定理を 3 次元の道に広げたもの(「微分を道に沿って積分すると、両端の差になる」)。2 行目は、E = −∇V を使うと、始点から終点までの電場の線積分が、電位差 V(始点) − V(終点) になる、ということで、「電場の線積分が道によらない」ので、電位差が、道の選び方によらず、1 つに決まる、ということの根拠です。

④ よくある間違い
  • どんな場でも道によらないわけではありません。道によらないのは、∇V の形に書ける場(静電場)だけで、渦の場(左の図)や、時間変化する磁場にともなう電場では、道によって変わります(4・5 章・8 章)。
  • ダッシュ ′(f′)と、Δ(有限の変化量)と、d(ごく小さな変化)は別の記号です。Δx は有限の小さな幅、dx は Δx を 0 に近づけたとき、の意味です。

0-5. 面積分・体積積分: 「面や体積に分けて足す」

一様な磁束密度 B(上向き)の中の、長方形の面(断面を太い線で描いた)。面に垂直な向きの単位ベクトル n̂ と B のなす角が θ = 60°。

① 定義と意味

面 S を小さな面積 ΔS に分けて、各部分の「場の、面に垂直な成分 × ΔS」を足したもの、つまり流束(通り抜ける量)が面積分 ∫S F·n̂ dS です。n̂(エヌ・ハット)は、面に垂直で、長さ 1 の向き(法線)。閉じた面では、外向きにとります。体積積分 ∫V g dV は、体積を小さな体積 ΔV に分けて、g ΔV を足したもの(例: 電荷密度 ρ を体積積分すると、中の電荷の合計 Q)です。

② 具体例

B = 0.5 T(一様)・面は辺 0.2 m × 0.1 m の長方形(S = 0.02 m²)。B と法線 n̂ のなす角が θ = 60° のとき、B の面に垂直な成分は B cos 60° = 0.25 T で、Φ = 0.25 × 0.02 = 0.005 Wb(ウェーバ。T·m²)。面を水平に(θ = 0°)置くと、0.5 × 0.02 = 0.01 Wb。面を傾けると、磁束が減ります。面が B と平行(θ = 90°)なら、0 です。

  • 閉じた面の流束の例(立方体の面から出る F = (x, y, z) の流束)は4 章・8 章にあります。
  • 積分記号の約束: ∫ = 線積分(dl)、∬ = 面積分(dS)、∭ = 体積積分(dV)。このページの式では、∬・∭ の代わりに、∫ の右下に、何について足すか(道 C・面 S・体積 V)を書きます。

1. スカラー場とベクトル場

スカラー場の例: +の電荷(右)と −の電荷(左)がつくる電位 V。線は等電位線(同じ値の点を結んだ線)。赤 = 正、青 = 負、緑の太線 = 0。電荷の真上の小さな数字は、その線の値。
ベクトル場の例: 同じ 2 つの電荷の電場 E。各点の矢印の向きが E の向きです。矢印の長さは一定(向きだけ)で、濃さが |E| の大きさ(対数)を表します(電荷の近くで数十倍以上になり、長さで描くと、ほかが見えなくなるため)。長さを一定にしたのは、この図と 3 章の図 3b(3b は向きだけで、大きさは表しません)。
正の値・+電荷負の値・−電荷値 0 の等電位線ベクトル場の矢印

① 定義・② 意味

場とは、空間の各点 (x, y, z) に、量が 1 つずつ決まっているもののことです。決まっている量が数 1 つならスカラー場(例: 電位 V(x, y, z)[単位 V]、温度、高さ)、向きと大きさをもつ矢印ならベクトル場(例: 電場 E(x, y, z)[V/m]、磁束密度 B[T]、流れの速さ)です。ベクトル場は、3 つの成分の関数の組 F = (Fx(x, y, z), Fy(x, y, z), Fz(x, y, z)) として書けます。

③ 具体例(図の数値)

図の例の数値: 電荷 ±1 を (±0.8, 0, 0) に置き、V = 1/|r − r₊| − 1/|r − r₋|(比例の定数 1/(4πε₀)·q を 1 とした単位)。3 次元の電位を、z = 0 の面で切って見ています。

④ よくある間違い・このサイトのほかのページとのつながり
  • 等電位線は、電気力線ではありません。等電位線は「同じ値の点」を結んだ線(スカラー場の性質)、電気力線は「各点の E の向きに沿ってたどった線」(ベクトル場の性質)。電場の向きは、等電位線と直交します(3 章)。
  • 矢印の図は、場の「見本の点」だけを描いたものです。場は、矢印のない点にも、すき間なく決まっています。
  • つながり: 電気力線と等電位線・電位・電気力線・波のつながり・高度な動く回路図の電気力線/等電位線の窓。

2. ∇(ナブラ)= 微分のベクトル

ひとことで: 「x・y・z の 3 つの向きに、それぞれ偏微分せよ」という指示を、1 つにまとめた記号です(偏微分は 0-2)。何に作用させるかで、grad・div・rot の 3 通りになります。

偏微分: 点 (1, 0.5) から、x だけ動かす(琥珀)と、y だけ動かす(水色)。緑の線は V = x² + y² の等高線。どちらに動かしたかで、V の増え方が違います。

① 定義: 偏微分と ∇

偏微分 ∂f/∂x は、y と z を止めて、x だけを少し(h だけ)動かしたときの、f の変化の割合です。

2 行目は、3 つの向きに同時に少しずつ (dx, dy, dz) = dr 動いたときの f の変化 df が、3 つの偏微分の組 ∇f と、動いた向き dr の内積になる、という式です(f が滑らかなときの 1 次の近似)。この「3 つの偏微分を並べたもの」を作る記号が ∇ です。ここで「·」は内積で、2 つのベクトルの成分どうしを掛けて足したもの(a·b = axbx + ayby + azbz)です。

② 意味

∇ は、「x・y・z の 3 つの向きに、それぞれ微分せよ」という指示を、ベクトルの形にまとめた記号(演算子)です。何に、どう掛けるかで、3 通りに使い分けます。

書き方何に作用答え読み方・意味
∇fスカラー場 fベクトル場grad f(勾配)。いちばん急に増える向きと、その割合(3 章)
∇·Fベクトル場 Fスカラー場div F(発散)。内積の形。湧き出しの強さ(4 章)
∇×Fベクトル場 Fベクトル場rot F(回転。英語圏では curl)。外積の形。渦の強さと軸(5 章)
∇²f = ∇·∇fスカラー場 fスカラー場ラプラシアン。まわりの平均との差(6 章)

③ 具体例(数値)

V = x² + y² の点 (1, 0.5, 0) では、V = 1 + 0.25 = 1.25。y と z を止めて x だけ動かすと、∂V/∂x = 2x = 2、x と z を止めて y だけ動かすと、∂V/∂y = 2y = 1。V に z は入っていないので ∂V/∂z = 0。図で、x の向きに動かすほうが、等高線を速く横切る(V が速く増える)のは、このためです。

④ よくある間違い
  • ∇ は、それだけでは数でもベクトルでもありません。右に置いた場に作用して、はじめて値になります。∇·F と F·∇ は別物です(後者は、まだ何にも作用していない演算子)。
  • ∂f/∂x の「止める」: ほかの変数(y, z)を止めることが、偏微分の約束です。f = xy なら ∂f/∂x = y(y は定数として扱う)。
  • ここで書いた ∇ の成分の形(∂/∂x, ∂/∂y, ∂/∂z)は、直交座標だけのものです。円柱座標・球座標では、係数がつきます(9 章)。

3. grad(勾配)と E = −∇V

ひとことで: 地図の等高線で、「いちばん急な上り坂の向きと、その急さ」を教えてくれる矢印が grad です。電場は、電位の下り坂の向きを向きます(E = −∇V)。

V = x² + y² の等高線(緑・数字は V の値)と、∇V の矢印(琥珀。長さ ∝ |∇V| = 2√(x²+y²))。矢印は、等高線に垂直で、外向き(V が増える向き)。
2 つの電荷の等電位線(緑)と、電場 E = −∇V の向き(赤。長さ一定・向きだけ)。E は、等電位線に垂直で、電位が下がる向き(+から −へ)。
等高線・等電位線∇V(上り坂の向き)E = −∇V(下り坂の向き)

動かして確かめる(3D)

V を山の高さとして描きました。琥珀の点をドラッグして、山の上を歩いてみてください。そこでの ∇V が、いちばん急な上り坂の向きを向き、等高線に垂直なことが見えます。紫の矢印を回すと、その向きの傾き(∇V·u)が、図のそばの小さなグラフのとおり、cos の形で変わります。

(JavaScript が使えると、ここに、動かせる 3D の絵が出ます。上の静止図で読めます。)

① 定義

単位: V が電位[V]なら、∇V は[V/m](距離で微分するので、1 m あたり)。E = −∇V は、時間とともに変わらない電場(静電場)で成り立ちます。磁場が時間とともに変わるときは、ベクトル・ポテンシャル A の時間変化の項 −∂A/∂t が加わります(3 行目の式。誘導の電場)。

② 意味(なぜ「いちばん急な向き」で、なぜ「等高線に垂直」か)

2 章の式 df = ∇f · dr から、2 つのことが出ます。

  • 等高線に垂直: 等高線に沿って動くと、f は変わらない(df = 0)。すると ∇f · dr = 0 なので、∇f は、等高線に沿う向き dr と直交します。
  • いちばん急な向き: 長さ |dr| を決めて向きだけ変えると、df = |∇f| |dr| cos θ(θ は ∇f と dr のなす角)。これが最大になるのは θ = 0、つまり ∇f の向きに動くときで、そのときの増え方の割合が |∇f| です。

E = −∇V の「−」は、電場が、電位の下がる向き(+の電荷を置いたら、押される向き)を向く、という約束です。+の電荷は、電位の山から谷へ押されます。

③ 具体例(途中を省かずに)

  1. V = x² + y² を、x で偏微分する。y と z は止めるので、y² は定数として扱われ、微分すると 0。x² は、(x²)′ = 2x(0-1 の公式)。よって ∂V/∂x = 2x。
  2. y で偏微分するときは、x² が定数なので 0、y² は 2y。よって ∂V/∂y = 2y。
  3. V には z が入っていない(z を変えても V は変わらない)ので、∂V/∂z = 0。
  4. 3 つの偏微分を並べると、∇V = (2x, 2y, 0)。点 (1, 0.5, 0) では、x = 1、y = 0.5 を入れて、(2, 1, 0)。
  5. ベクトルの大きさは、成分の 2 乗の和の平方根(三平方の定理): |∇V| = √(2² + 1²) = √5 ≈ 2.236。

点 (1, 0.5, 0) での ∇V = (2, 1, 0)、大きさ ≈ 2.236(上の 4・5 段)。この向き (2, 1) は、その点と原点を結ぶ向き (1, 0.5) と同じ(外向き)で、等高線(原点を中心とする円)に垂直です。もし V が電位[V]で、x, y が[m]なら、そこでの電場は E = −∇V = (−2, −1, 0) V/m(原点に向かう)。

④ よくある間違い・つながり
  • grad の矢印の長さは、等高線の「間隔」の逆数に比例します(同じ値の差で引いた等高線なら、線が混んでいるところほど |∇V| が大きい)。等高線の値そのものの大きさではありません。
  • 符号: ∇V は上り坂、E = −∇V は下り坂。同じ V について、琥珀の矢印(∇V)と赤の矢印(E = −∇V)は、逆向きです。
  • 電位の地形の坂がいつも電場だとは限りません。時間変化する場では E = −∇V − ∂A/∂t です(このサイトでは、電位・電気力線・波のつながりの「作り方・省略したこと」で、線路に沿う向きの例を説明しています)。
  • つながり: 電気力線と等電位線・電位・電気力線・波のつながり(断面の「坂の向き E⊥ = −∇⊥φ」)・高度な動く回路図の等電位線の窓。

4. div(発散)と ∇·E = ρ/ε₀

ひとことで: その点から、場が湧き出している(+)か、吸い込まれている(−)か、その強さを、数 1 つで表します。電場の湧き出し口は、電荷です。

湧き出し: F = (x, y, z)。どこでも ∇·F = 3。小さな四角(紫)の、原点側の辺からは入る(水色)が、反対側の辺から、それより多く出て(琥珀)、正味で外へ出る。
吸い込み: F = −(x, y, z)。∇·F = −3。湧き出しの逆で、正味で中へ入る。
一様な流れ: F = (1, 0.5, 0)。∇·F = 0。入る量(水色)と出る量(琥珀)が同じで、正味 0。
線電荷の電場の形: F = (x, y, 0)/(x² + y²)。広がって見えても、原点(赤)の外では ∇·F = 0。外へ遠ざかる辺ほど矢印が短くなり、出入りが釣り合う。
場 F の矢印(長さ ∝ |F|)小さな閉じた曲面(ここでは四角)辺から外へ出る流束辺から中へ入る流束(箱の辺の、太い矢印)

図は z = 0 の断面です。紫の四角(中心 (0.9, 0.6)・一辺 0.6・面積 0.36)は、xy 面の中の 2 次元の「箱」で、4 辺から出る正味の量は、四角の中で div が一定なら、2 次元の div(∂Fx/∂x + ∂Fy/∂y)× 面積です(一定でなければ、四角の中で足し合わせたもの)。湧き出し・吸い込みの例では、3 次元の div(±3)のうち z の向きの分(±1)は、この断面の図には出てきません(3 次元の箱なら、上下の面から出入りする分)。一様・線電荷の形の例は Fz = 0 なので、2 次元と 3 次元の div が同じです。

動かして確かめる(3D)

小さな箱を、流れの中に置きました。紫の点をドラッグして箱を動かし、6 つの面から出入りする量(流束)を見てください。合計を箱の体積で割ったものは、箱を小さくした極限で、その点の div になります(この絵の湧き出し・一様などでは、箱の大きさによらず div と同じ)。「場所で変わる」流れでは、箱を小さくするほど、その点の div に近づきます。白い粒子は、湧き出しの所で生まれ(琥珀)、吸い込みの所で消えます(青)。

(JavaScript が使えると、ここに、動かせる 3D の絵が出ます。上の静止図で読めます。)

① 定義

流束とは、面を通り抜ける量のことで、面の各点で F·n̂(面に垂直な成分)を、面の上で足し合わせたもの(∫F·n̂ dS)です。1〜2 行目が成分での定義、3 行目が意味(小さな体積 ΔV を包む閉じた面から、外へ出る流束 ∮F·n̂ dS を、体積で割って、体積を 0 に近づけた値)。n̂ は、面の外向きの単位法線で、F·n̂ が正なら出ていく、負なら入ってくる量です。4・5 行目は、マクスウェルの方程式の 2 つ(電場のガウスの法則・磁場のガウスの法則)。ρ は電荷密度[C/m³]、ε₀ は真空の誘電率[F/m]。

② 意味

div は「その点に、湧き出し口(正)または吸い込み口(負)があるか、その強さはどれだけか」を表します。∇·E = ρ/ε₀ は、「電場が湧き出すのは、電荷のあるところだけ(正の電荷から湧き出し、負の電荷に吸い込まれる)」。∇·B = 0 は、「磁場には、湧き出し口・吸い込み口がない(単独の磁極はない)」と読めます。

③ 具体例(途中を省かずに)

  1. 1 つ目(F = (x, y, z)): Fx = x、Fy = y、Fz = z。div の定義は、同じ文字どうしの偏微分を足すこと(∂Fx/∂x + ∂Fy/∂y + ∂Fz/∂z)。∂x/∂x = 1、∂y/∂y = 1、∂z/∂z = 1 なので、足して 3。
  2. 2 つ目(線電荷の形): Fx = x/(x² + y²) を x で偏微分する(y は定数扱い)。分数なので、商の微分 (u/v)′ = (u′v − uv′)/v² を使う。u = x(u′ = 1)、v = x² + y²(v′ = 2x)なので、[1·(x²+y²) − x·2x]/(x²+y²)² = (y² − x²)/(x²+y²)²。
  3. Fy = y/(x² + y²) を y で偏微分する。u = y(u′ = 1)、v′ = 2y なので、[(x²+y²) − y·2y]/(x²+y²)² = (x² − y²)/(x²+y²)²。
  4. 2 つを足すと、分子が (y² − x²) + (x² − y²) = 0(分母は共通)。Fz = 0 は定数なので、∂Fz/∂z = 0。よって原点の外では ∇·F = 0。

数値で確かめると、1 つ目は ∇·F = 3(場所によらない)。図の xy 面の四角(面積 0.36)では、x と y の 2 つの向きの分(2 次元の div = 2)だけが効いて、2 × 0.36 = 0.72 が、四角の 4 辺から外へ出ます(図の左上の数値。数値積分)。

2 つ目(線電荷の形)は、数値微分でも 0.000(原点では、分母が 0 で定義できません。そこに線電荷があります)。

④ よくある間違い・つながり
  • 「矢印が広がっている = div が正」ではありません。線電荷・点電荷の電場は、外へ広がって見えますが、電荷のない場所では div = 0 です。広がる分だけ、外ほど弱くなり、小さな箱に入る量と出る量が釣り合います(右下の図)。
  • div は、スカラー(数)です。向きはありません。
  • ∇·F の「·」は、∇ と F の各成分を掛けて足す、という内積の形の書き方です。∂Fx/∂x のように、同じ文字どうし(x と x)を組にします。
  • つながり: 電気力線と等電位線(電気力線は+の電荷から出て−の電荷に入る = 湧き出しと吸い込み)。

5. rot(回転)と ∇×B = μ₀J

ひとことで: その点に小さな羽根車を置いたら、どちら向きに、どれだけ回るか。その向き(軸)と強さを、ベクトルで表します。静磁場(時間変化しない場)では、磁場の渦の元は、電流です。

回転: F = (−y, x, 0)。∇×F = (0, 0, 2)。どこに羽根車を置いても、反時計まわり(+z の向きに右ねじ)に回る。
ずれ: F = (y, 0, 0)。流れはまっすぐなのに、∇×F = (0, 0, −1)。上ほど、右向きの速さが大きい(Fx が y とともに増える)ので、羽根車は時計まわりに回る。
渦(直線電流の磁場の形): F = (−y, x, 0)/(x² + y²)。ぐるぐる回って見えても、原点(電流 ⊙)の外では ∇×F = 0。羽根車は回らない。
場 F の矢印羽根車(その点に置いたとして)回る向き(弧の長さ ∝ |rot の z 成分|)・小さな四角をひと回りする向き(反時計まわり)

羽根車は、その点の流れ(F を流れの速さと見たとき)に置いた、小さな水車の模式です。理想化した(流れにぴったりついて回る)羽根車の角速度は、rot の z 成分の 1/2(剛体の回転では、rot = 角速度の 2 倍。出典は下の一覧)。四角は、中心 (0.9, 0.6)・一辺 0.6、ひと回りの向きは反時計まわり(右ねじで +z)。

動かして確かめる(3D)

羽根車を、3 次元の流れの中に置きました。軸の向きを変えると、同じ場所でも、回る速さが変わります。回る速さは、rot の向きに軸を合わせたとき最大で、直角にすると 0(回らない)。これが、「rot はベクトル(向きと強さをもつ)」の意味です。

流れの種類は 5 つです。「渦」は、流れが円をえがいていても、中心の線の外では rot = 0 で、羽根車は回りません(内側ほど流れが速いことと、流れが曲がっていることが、羽根車を逆向きに回そうとして、ちょうど打ち消し合います)。「流れに乗せる」ボタンで、羽根車が流れに乗って動く(公転する)ようすを見ると、渦では、中心のまわりを回っても、羽根の向きは変わらない(自転しない)ことが分かります。「導線の中と外」は、太い導線のまわりの磁場の形で、電流が流れている中では羽根車が回り、外では回りません(∇×B = μ₀J)。

(JavaScript が使えると、ここに、動かせる 3D の絵が出ます。上の静止図で読めます。)

① 定義

1〜4 行目が成分での定義です。5 行目は、それを覚えやすくした行列式の形(3 × 3 の表から 1 つの式を作る計算。ここでは覚え方としてだけ使います)で、1 行目の単位ベクトルで展開すると(6〜8 行目)、成分の定義と同じになります(∂/∂x などは数ではないので、正式な行列式ではなく、覚え方)。「外積の形」とは、a×b = (aybz − azby, azbx − axbz, axby − aybx) の a を ∇ に置き換えた形、という意味です。9 行目が意味: 法線 n̂ に垂直な小さな面 ΔS の縁を、右ねじの向き(親指を n̂ に向けて、残りの指が巻く向き)にひと回りして、F を道に沿って足した量(循環 ∮F·dl)を、面積で割って、面積を 0 に近づけた値が、rot の n̂ 方向の成分です。10・11 行目は、マクスウェルの方程式の 2 つ(静磁場のアンペールの法則と、ファラデーの電磁誘導の法則)。J は電流密度[A/m²]、μ₀ は真空の透磁率[H/m]。

② 意味

rot は「その点のまわりで、場がぐるぐる回る(循環する)強さと、その回転の軸」を表すベクトルです。向きは、回転の軸で、右ねじの約束(反時計まわり ↔ 手前向き)。∇×B = μ₀J は、「磁場の渦があるのは、電流が流れているところだけ」、∇×E = −∂B/∂t は、「磁場が時間とともに変わるところには、電場の渦ができる(電磁誘導)」と読めます。

③ 具体例(途中を省かずに)

  1. z 成分の定義は (∇×F)z = ∂Fy/∂x − ∂Fx/∂y。F = (−y, x, 0) なので、Fy = x、Fx = −y を入れる。
  2. ∂Fy/∂x = ∂x/∂x = 1。∂Fx/∂y = ∂(−y)/∂y = −1(−y を y で微分すると −1)。
  3. 引き算: 1 − (−1) = 2(マイナスを引くと、プラスになる)。
  4. x 成分は ∂Fz/∂y − ∂Fy/∂z。Fz = 0(定数の微分は 0)、Fy = x には z がない(z で微分すると 0)ので、0 − 0 = 0。y 成分も同じ理由で 0。
  5. まとめ: ∇×F = (0, 0, 2)。向きは z(xy 面を反時計まわりに回る流れの軸の向き)、大きさ 2。

回転 (−y, x, 0) の (∇×F)z = 2(上の 1〜3 段)。小さな四角(面積 0.36)をひと回りした循環は、2 × 0.36 = 0.72(図の左上の数値。数値積分)。

ずれ (y, 0, 0): z 成分は 0 − ∂y/∂y = −1。四角の上の辺(y が大きい)で右へ速く、下の辺で右へ遅い(y < 0 なら左へ)ので、反時計まわりにたどると、上の辺(左向きにたどる)の負の寄与が勝ちます。

渦 (−y, x, 0)/(x²+y²): ∂/∂x [x/(x²+y²)] = (y² − x²)/(x²+y²)²、∂/∂y [−y/(x²+y²)] = −(x² − y²)/(x²+y²)² = (y² − x²)/(x²+y²)²。z 成分は、前者 − 後者 = 0(数値でも 0.000)。原点を囲む道をひと回りしたときの循環は 2π で、0 ではありません(原点に「電流」がある。8 章のストークスの定理で、原点を含む面では、rot の積分に原点の寄与が入る)。

④ よくある間違い・つながり
  • 「回って見える = rot がある」ではありません。直線電流のまわりの磁場は、円を描いて回りますが、電流のない場所では ∇×B = 0 です(右の図)。逆に、まっすぐな流れでも、速さがずれていれば rot があります(中の図)。上の 3D の絵で、羽根車を「流れに乗せる」と、渦では、中心のまわりを回るだけで自転しない(観覧車のゴンドラのように、向きを保つ)のが見えます。
  • rot はベクトルで、向きは「回転の軸」です(回っている平面の上の向きではない)。xy 面で回る渦の rot は、z の向き。
  • 成分の順番と符号: x 成分 = ∂Fz/∂y − ∂Fy/∂z のように、x → y → z → x の順に巡回させて書くと、間違えにくくなります。
  • つながり: 誘導(電磁誘導)(準備中)(∇×E = −∂B/∂t)・高度な動く回路図の磁場の窓(導線のまわりの磁場の円)。

6. ラプラシアンと、ラプラス・ポアソン方程式

ひとことで: その点の値が、まわりの平均と比べて、高いか・低いか。0 なら、ちょうど平均で、山の頂上も谷底もありません。

V = x² − y²(∇²V = 0 の解)の等高線(赤 = 正、青 = 負、緑 = 0)。点 (1.2, 0.4) の値と、その点を中心とする半径 0.6 の円(破線)の上の平均が、等しい。

① 定義

ラプラシアン ∇² は、grad をとってから div をとったもの(∇·∇)で、2 階の偏微分の和です。電位について、∇·E = ρ/ε₀ に E = −∇V を入れると、∇·(−∇V) = ρ/ε₀、つまり ∇²V = −ρ/ε₀(ポアソン方程式)。電荷のない場所では ∇²V = 0(ラプラス方程式)。

② 意味

∇²V は、「その点の V が、まわりの平均と、どれだけ違うか」を表します(差分で書くと、∇²V ≈ [前後・左右・上下の 6 点の V の和 − 6V]/h²)。∇²V = 0 が領域のどこでも成り立つなら、その領域のどの点の値も、まわりの平均にちょうど等しく、電荷のない領域の中には、電位の山の頂上も谷底もできません(山や谷は、電荷のある場所か、境界にだけ)。

③ 具体例

  1. ∂²V/∂x² は、「V を x で偏微分したものを、もう 1 回 x で偏微分する」という意味(∂/∂x を 2 回)。
  2. V = x² + y² では、∂V/∂x = 2x、これをもう 1 回 x で偏微分して ∂(2x)/∂x = 2。y も同じで 2。V に z はないので 0。
  3. 3 つを足すと ∇²V = 2 + 2 + 0 = 4。

V = x² + y² の ∇²V = 4(上の 3 段。中心がまわりより低い = 谷)。V = x² − y²: 2 + (−2) + 0 = 0(鞍の形。x の向きには谷、y の向きには山で、打ち消す)。図の点 (1.2, 0.4) で、V = 1.44 − 0.16 = 1.28、円の上の平均(数値積分)も 1.28。

④ よくある間違い・つながり
  • ∇² は「2 乗」ではなく、∇·∇(div grad)です。∇²V はスカラー。ベクトル場に作用させる ∇²A は、直交座標では成分ごとの ∇²(ほかの座標では、成分ごとにはなりません)。
  • 符号: ∇²V = −ρ/ε₀。正の電荷がある場所(ρ > 0 の中)では、V は、まわりの平均より高く、∇²V < 0。電荷のまわり(電荷の外。ρ = 0)では、∇²V = 0 です(1 章の最初の図の、2 つの点電荷の外も、そう。自作の検算プログラム(非公開) で確かめています)。
  • つながり: このサイトの静電場の計算(電気力線と等電位線)は、ラプラス方程式を、境界の電位を決めて解いています。

7. 恒等式: ∇×(∇φ) = 0、∇·(∇×A) = 0、∇×(∇×A)、∇·(E×H)

ひとことで: 勾配には渦がなく、回転(渦)には湧き出しがありません。これが、静電場が(ひと回りで仕事が 0 の)保存力であること、磁場に湧き出しがないことの数学的な根拠です。

図 7a: 勾配の場 ∇φ(灰色の矢印。φ = x² + y²・緑は φ の等高線)に、閉じた道を 2 つ置いた。道は反時計まわり(白い矢じり)にたどり、∇φ·dl が正の部分(上り)を琥珀、負の部分(下り)を水色で塗った。上りの合計と下りの合計が打ち消して、循環は 0(上の数値。数値積分)。
図 7b: B = ∇×A(A = (−yz/2, xz/2, 0))の z = 0 の断面(水色の矢印)。xy 面では吸い込みのように見え、紫の箱の 4 つの側面では、入る量(水色の太い矢印)が出る量(琥珀)より大きく、正味で入る。けれども、Bz = z なので、上下の面(紙面の手前と奥。中央の ⊙)から同じ量が出て、箱全体では 0。
道の上り(∇φ·dl > 0)・箱から出る道の下り(< 0)・箱に入る・B の矢印φ の等高線閉じた箱(断面)白の矢じり = 道をたどる向き(図 7a)

① 定義(式と、途中を省かない証明)

∇×(∇φ) = 0(上の 3〜4 行目。x 成分)を、1 段ずつ:

  1. φ は、どんなスカラー場でもよい。F = ∇φ の成分は、Fx = ∂φ/∂x、Fy = ∂φ/∂y、Fz = ∂φ/∂z(2 章)。
  2. rot の x 成分の定義 (∇×F)x = ∂Fz/∂y − ∂Fy/∂z(5 章)に入れる: ∂/∂y (∂φ/∂z) − ∂/∂z (∂φ/∂y)。
  3. これは、φ の 2 階の偏微分 ∂²φ/∂y∂z と ∂²φ/∂z∂y の差。2 階の偏微分が連続なら、微分の順序を入れ替えても同じ(0-2。シュワルツの定理)なので、同じ値どうしの引き算で 0。
  4. y・z 成分は、x → y → z → x と文字を入れ替えるだけで、同じ形になり、0。よって、ベクトルとして ∇×(∇φ) = 0。

∇·(∇×A) = 0(上の 5〜8 行目)を、1 段ずつ:

  1. ∇×A の成分を、rot の定義(5 章)で書く: (∇×A)x = ∂Az/∂y − ∂Ay/∂z、(∇×A)y = ∂Ax/∂z − ∂Az/∂x、(∇×A)z = ∂Ay/∂x − ∂Ax/∂y。
  2. div の定義(4 章)は、「同じ文字の偏微分を足す」: ∂/∂x (∇×A)x + ∂/∂y (∇×A)y + ∂/∂z (∇×A)z。ここに前の行を入れて、かっこを開くと、2 階の偏微分が 6 つ出る。
  3. 6 つを、同じ成分の組でまとめる: Az は ∂²Az/∂x∂y − ∂²Az/∂y∂x、Ax は ∂²Ax/∂y∂z − ∂²Ax/∂z∂y、Ay は ∂²Ay/∂z∂x − ∂²Ay/∂x∂z。
  4. どの組も、微分の順序を入れ替えたもの どうしの引き算(順序は入れ替えてよい)なので、0。よって ∇·(∇×A) = 0。

② 意味(図 7a・7b)

  • ∇×(∇φ) = 0: 勾配でつくった場(坂の向き)には、渦がない。8 章のストークスの定理で、面の上の rot の積分 = 道の循環 なので、どの閉じた道をひと回りしても、∮∇φ·dl = 0。坂を上った分だけ、必ずどこかで下る、ということです(図 7a。この図の道のように、上りと下りが 1 回ずつなら、上りの合計は、道の上の φ の最高と最低の差)。静電場は E = −∇V なので、∇×E = 0 で、閉じた道をひと回りしたときの仕事は 0(保存力)。逆に、渦のある場は、どんなスカラー場の勾配でもない。
  • ∇·(∇×A) = 0: 渦(rot)でつくった場には、湧き出しがない。8 章のガウスの定理で、どの閉じた箱からも、∇×A の流束は正味 0(図 7b。断面だけを見ると吸い込みに見えても、断面に垂直な向きの出入りまで入れると 0)。磁場は ∇·B = 0 を満たすので、B = ∇×A(A はベクトル・ポテンシャル)と書けます(逆に、B = ∇×A と書けば、この恒等式で、∇·B = 0 が自動的に成り立つ)。また、∇×B = μ₀J の両辺の div をとると、左辺は 0 なので ∇·J = 0(静的な場合)。時間とともに変わる場合は、変位電流の項が加わって、電荷の保存の式になります(マクスウェルの方程式のコーナーの 4 章の折りたたみ ④)。

③ 具体例(図の数値)

図 7a: 円(中心 (0.7, 0.5)・半径 0.75)では、上り 2.581、循環 0.000。上りの合計は、円の上の φ = x² + y² の最高(原点から最も遠い点。距離 √(0.7² + 0.5²) + 0.75 ≈ 1.6102、φ ≈ 2.5928)と最低(距離 ≈ 0.1102、φ ≈ 0.0121)の差 ≈ 2.581 と一致します。四角(中心 (−0.9, −0.9)・一辺 0.9)では、上り 3.240(角 (−1.35, −1.35) の φ = 3.645 と、角 (−0.45, −0.45) の φ = 0.405 の差)、循環 0.000。

図 7b: A = (−yz/2, xz/2, 0) の rot は、x 成分 ∂Az/∂y − ∂Ay/∂z = 0 − x/2、y 成分 ∂Ax/∂z − ∂Az/∂x = −y/2 − 0、z 成分 ∂Ay/∂x − ∂Ax/∂y = z/2 + z/2 = z なので、B = (−x/2, −y/2, z)、∇·B = −1/2 − 1/2 + 1 = 0。箱(xy は中心 (0.9, 0.6)・一辺 0.6、z は −0.3〜0.3。体積 0.216)の 4 つの側面からは、xy の向きの div(−1)× 体積 = −0.216(入る)、上下の面からは、Bz = ±0.3 × 面積 0.36 × 2 面 = 0.216(出る)。合計 0.000(数値積分)。

7-2. ∇×(∇×A) = ∇(∇·A) − ∇²A(電磁波の波動方程式で使う)

① 定義(x 成分で、途中を省かずに)

x 成分を、1 段ずつ(上の 2〜9 行目):

  1. G = ∇×A とおく。rot の x 成分の定義: (∇×G)x = ∂Gz/∂y − ∂Gy/∂z(2〜3 行目)。
  2. Gz = ∂Ay/∂x − ∂Ax/∂y、Gy = ∂Ax/∂z − ∂Az/∂x を入れる(4 行目。まだ、かっこの中の微分を配る前の形)。続いて微分を配ると ∂²Ay/∂y∂x − ∂²Ax/∂y² − ∂²Ax/∂z² + ∂²Az/∂z∂x。2 階の偏微分は、順序を入れ替えてよい(連続のとき)ので、∂²Ay/∂x∂y・∂²Az/∂x∂z と書ける(5 行目は、この 2 つの段を 1 行にまとめた形)。
  3. 同じ項 ∂²Ax/∂x² を、足して引く(0 を足しただけなので、値は変わらない。6〜7 行目)。
  4. 足したほうの項と、∂²Ay/∂x∂y・∂²Az/∂x∂z をまとめる: ∂/∂x (∂Ax/∂x + ∂Ay/∂y + ∂Az/∂z) = ∂/∂x (∇·A)(8 行目)。
  5. 引いたほうの項と、−∂²Ax/∂y²・−∂²Ax/∂z² をまとめる: −(∂²/∂x² + ∂²/∂y² + ∂²/∂z²) Ax = −∇²Ax(8〜9 行目)。
  6. x 成分は、∂(∇·A)/∂x − ∇²Ax。y・z 成分も、文字を x → y → z → x と入れ替えて同じ形なので、ベクトルで ∇×(∇×A) = ∇(∇·A) − ∇²A。

ここの ∇²A は、直交座標の成分ごとのラプラシアン (∇²Ax, ∇²Ay, ∇²Az) です(6 章の注)。円柱座標・球座標では、成分ごとにはなりません。

② 意味

rot を 2 回とると、「div の勾配」と「ラプラシアン」に分かれる、という式です。真空中で ∇·E = 0 のとき、∇×(∇×E) = −∇²E になり、ファラデーの法則とアンペール・マクスウェルの法則を組み合わせると、電場の波動方程式が出ます(その導出は、マクスウェルの方程式のコーナーの 5 章)。

③ 具体例(手計算と、数値微分)

1 つ目: ∇×A の x 成分は ∂(zx)/∂y − ∂(yz)/∂z = 0 − y、y 成分は ∂(xy)/∂z − ∂(zx)/∂x = 0 − z、z 成分は ∂(yz)/∂x − ∂(xy)/∂y = 0 − x。もう一度 rot をとると、x 成分 ∂(−x)/∂y − ∂(−z)/∂z = 0 + 1 = 1、y・z も同様に 1。右辺は、∇(x + y + z) = (1, 1, 1)、A の各成分は 1 次式の積なので ∇²A = 0。両辺とも (1, 1, 1)。点 (0.3, −0.7, 0.2) で、左辺を数値微分すると (1.000, 1.000, 1.000)、右辺も (1.000, 1.000, 1.000)。

2 つ目(div が 0 の例): ∇·A = ∂(sin y)/∂x + ∂(sin z)/∂y + ∂(sin x)/∂z = 0 なので、∇×(∇×A) = −∇²A。∇²(sin y) = −sin y などから、−∇²A = (sin y, sin z, sin x)。同じ点で、左辺の数値微分は (−0.644, 0.199, 0.296)、右辺は (−0.644, 0.199, 0.296)。sin(−0.7) ≈ −0.644、sin 0.2 ≈ 0.199、sin 0.3 ≈ 0.296 と一致します。

7-3. ∇·(E×H) = H·(∇×E) − E·(∇×H)(ポインティングの定理の元)

① 定義(途中を省かずに)

1 段ずつ(上の 2〜10 行目):

  1. 外積 E×H の成分(5 章の外積の式)は、(EyHz − EzHy, EzHx − ExHz, ExHy − EyHx)。これを div の定義(x 成分は x で、y 成分は y で、z 成分は z で微分して足す)に入れる(2〜4 行目)。
  2. どの項も、E の成分と H の成分の積。積の微分 ∂(ab)/∂x = (∂a/∂x) b + a (∂b/∂x) で、1 つの項が 2 つに分かれ、全部で 6 × 2 = 12 項になる。
  3. E を微分した 6 項を、Hx・Hy・Hz でまとめる(5〜6 行目): Hx(∂Ez/∂y − ∂Ey/∂z) + Hy(∂Ex/∂z − ∂Ez/∂x) + Hz(∂Ey/∂x − ∂Ex/∂y)。かっこの中は、∇×E の x・y・z 成分そのものなので、H·(∇×E)(7 行目)。
  4. H を微分した 6 項を、Ex・Ey・Ez でまとめる(8〜9 行目): Ex(∂Hy/∂z − ∂Hz/∂y) + … かっこの中は、∇×H の成分(例: x 成分は ∂Hz/∂y − ∂Hy/∂z)の符号を逆にしたものなので、−E·(∇×H)(10 行目)。
  5. 2 つを合わせて、∇·(E×H) = H·(∇×E) − E·(∇×H)。

② 意味

E×H は、電磁場のエネルギーの流れ(ポインティング・ベクトル)で、その div は「その点から、エネルギーが正味で流れ出す割合」です。右辺の ∇×E・∇×H に、マクスウェルの方程式を入れると、「流れ出す分 = 場のエネルギーの減り − 電流に渡す分(ジュール熱など)」というエネルギーの収支の式(ポインティングの定理)になります(この定理の導出は、マクスウェルの方程式のコーナーの 7 章にあります。5 章に、エネルギーの流れ S の平面波の例もあります)。

③ 具体例(数値微分)

E = (yz², sin(xz), x²y)、H = (xy, z cos y, ex/2 + z)(電磁場ではなく、式の検算のための滑らかな例の関数)の点 (0.3, −0.7, 0.2) で、左辺 ∇·(E×H) = 0.277、右辺 H·(∇×E) − E·(∇×H) = 0.277(それぞれ、別々に数値微分)。

④ よくある間違い・つながり
  • ∇×(∇×A) を、ふつうのベクトルの公式 a×(b×c) = b(a·c) − c(a·b) に、そのまま当てはめない。形は似ていますが、∇ は微分の演算子なので、「どれに作用するか」を、成分の計算で確かめるのが確実です(上の 2〜9 行目)。
  • ∇·(E×H) の符号: 右辺の 2 つの項は、−(引き算)です。外積の順番を入れ替えると符号が変わる(E×H = −H×E)のと同じ理由です。
  • 恒等式は、どの場でも成り立つ「数学の式」です。物理の法則(マクスウェルの方程式)とは別で、法則の式を変形するときの道具として使います。
  • 図 7a の道・図 7b の箱は、場が滑らかな(特異点のない)ところに置いています。5 章の渦 (−y, x, 0)/(x²+y²) は、原点の外では rot = 0 ですが、原点を囲む道の循環は 2π です。原点に穴のあいた領域では、全体を 1 つの(1 価の)スカラー場の勾配として書けないためで、7a の「どの道でも 0」は、原点を囲まない道に限られます。

8. 積分定理: ガウスの定理とストークスの定理

ひとことで: 小さな箱(小さな四角)の出入りを、全部足していくと、となりどうしの面(辺)は打ち消しあって、外側だけが残ります。「内側の合計 = 外側の量」を結ぶのが、この 2 つの定理です。

ガウスの定理: 立方体 [0, 1]³ と F = (x, y, z)。灰色の矢印 = 外向きの法線 n̂、琥珀 = 面の中心での F。x = 1・y = 1・z = 1 の面から 1 ずつ出て、原点側の 3 つの面(−x・−y・−z)では F·n̂ = 0。
ストークスの定理: xy 面の単位円板(斜めから見た図)と F = (−y, x, 0)。縁を反時計まわり(上から見て。琥珀の矢印 = 縁の上の F が、この向き)にたどると、右ねじで、法線 n̂ は +z(中心の白い矢印)。赤の矢印が、面を貫く ∇×F = 2ẑ。左下は座標軸。

動かして確かめる(3D)

「分割数 m」を増やして、大きな箱(四角)を、小さな箱(四角)に分けてみてください。小さな箱の流束(四角の循環)を全部足しても、内側の面(辺)の分は 0 で、外側の分だけが残ります(表)。

(JavaScript が使えると、ここに、動かせる 3D の絵が出ます。上の静止図で読めます。)

① 定義(2 つの定理の式)

ガウスの定理(発散定理)

ストークスの定理

② 意味

ガウス: 左辺は、体積 V の中の div の合計(体積積分)、右辺は、その体積を包む閉じた面 S から外へ出る流束(面積分。n̂ は外向きの単位法線)。4 章の「div = 小さな箱から出る量 ÷ 体積」を、体積を小さな箱に分けて足し合わせると、となりの箱どうしの境の面では、一方から出る量が他方に入る量なので打ち消し、外側の面だけが残る、と読めます(F が滑らかで、面が区分的に滑らかなとき)。2 行目は、電場のガウスの法則の積分の形(Q中 は、面の中の電荷の合計)。

ストークス: 左辺は、閉じた道 C をひと回りしたときの、道に沿った F の和(線積分・循環)、右辺は、C を縁とする面 S を貫く rot の流束(面積分)。向きの約束: C をたどる向きに右手の指を巻いたとき、親指の向きが n̂(右ねじ)。5 章の「rot = 小さな四角の循環 ÷ 面積」を、面を小さな四角に分けて足すと、となりの四角の境の辺は、逆向きにたどるので打ち消し、外側の縁だけが残る、と読めます。2 行目は、静磁場のアンペールの法則の積分の形(I貫く は、面を n̂ の向きに貫く電流)。

③ 具体例

  1. ガウス(立方体): 左辺は、∇·F = 3 を体積の全体で足す。3 は場所によらない定数なので、体積積分は「3 × 体積」= 3 × 1 = 3。
  2. 右辺は、立方体の 6 つの面で F·n̂ を足す。x = 1 の面は、n̂ = (1, 0, 0)(外向き)で、F·n̂ = Fx = x = 1(この面では x = 1)。面積 1 を掛けて、流束 1。
  3. x = 0 の面は、n̂ = (−1, 0, 0)(外向き)で、F·n̂ = −x = 0(この面では x = 0)。流束 0。y・z の向きの面も同じ(1 + 0)。
  4. 6 面の合計は 1 + 0 + 1 + 0 + 1 + 0 = 3 で、左辺と一致。
  5. ストークス(単位円): 道を、角 t で表す(x = cos t、y = sin t。t は 0 から 2π。反時計まわり)。線積分の考え方は 0-4。
  6. 道に沿った小さな進みは、x・y を t で微分して、dl = (−sin t, cos t, 0) dt(0-1 の微分。(cos t)′ = −sin t、(sin t)′ = cos t)。
  7. 道の上の場は、F = (−y, x, 0) = (−sin t, cos t, 0)。内積: F·dl = (−sin t)(−sin t) + (cos t)(cos t) = sin²t + cos²t = 1(1 に dt が付く)。
  8. t が 0 から 2π まで足す(0-3 の積分): ∫02π dt = 2π。右辺は、∇×F = (0, 0, 2)、n̂ = ẑ なので (∇×F)·n̂ = 2(一定)。面積 π を掛けて 2π。左辺と一致。

ガウス: F = (x, y, z)、立方体 0 ≤ x, y, z ≤ 1。左辺: ∇·F = 3、体積 1 なので 3。右辺: x = 1 の面では n̂ = (1, 0, 0)、F·n̂ = x = 1、面積 1 で 1。x = 0 の面では n̂ = (−1, 0, 0)、F·n̂ = −x = 0。y・z も同じなので、合計 1 + 1 + 1 = 3。数値積分でも 3。

ストークス: F = (−y, x, 0)、C は単位円(x = cos t、y = sin t、t: 0 → 2π)。dl = (−sin t, cos t, 0) dt、F = (−sin t, cos t, 0) なので、F·dl = (sin²t + cos²t) dt = dt。ひと回りで 2π。右辺: ∇×F = (0, 0, 2)、n̂ = ẑ、面積 π なので 2π。数値積分でも 6.283(2π = 6.2832…)。

④ よくある間違い
  • 向き: ガウスの定理の n̂ は外向き(内向きにすると符号が逆)。ストークスの定理は、縁の向きと n̂ を右ねじで組にします(片方だけ逆にすると、符号が逆)。
  • ストークスの定理の S は、同じ縁 C をもつ面なら、2 つの面のあいだに場が定義できない点がない限り、どの面でもかまいません(∇·(∇×F) = 0 のため。7 章)。
  • 場が、面の中・体積の中で定義できない点(例: 5 章の渦の原点)を含むときは、そのままでは使えません。

9. 円柱座標・球座標での ∇

ひとことで: 円柱や球の問題では、(x, y, z) の代わりに、半径と角度で場所を表すほうが楽です。そのとき ∇ の成分に、半径や sin θ の係数がつく理由を、小さな箱の体積から導きます。

図 9a: 円柱座標の微小な体積要素(見やすいように、dρ・dφ・dz を大きく描いた模式。形は、式から計算)。方位角を dφ だけ回すと、半径 ρ の円の弧を進むので、その辺の長さは ρ dφ(角度 × 半径)。
図 9b: 球座標の微小な体積要素(同じく模式)。θ を dθ だけ変えると、半径 r の経線の弧で長さ r dθ。φ を dφ だけ回すと、z 軸のまわりの、半径 r sinθ の緯線の円(破線)の弧を進むので、長さ r sinθ dφ。

記号の注意: この章の ρ は z 軸からの距離(半径)で、4・6・10 章の電荷密度 ρ とは別です。φ は方位角で、7 章のスカラー場 φ とは別です。

導線のまわり(円柱)や、点電荷のまわり(球)の場は、直交座標より、円柱座標 (ρ, φ, z)・球座標 (r, θ, φ) で書くほうが簡単です。ただし、∇ の成分に係数がつきます。θ は z 軸からの角、φ は x 軸からの方位角(物理でよく使う約束。数学の本では、θ と φ を入れ替えて書くものがあります)。

① 定義(円柱座標・球座標の式)

円柱座標

球座標

rot(円柱座標)

4 行目は、5 章の渦 Fφ = 1/ρ の例で、原点の外では ẑ 成分 = 0 です。

rot(球座標)(3 成分。② で、r̂ 成分だけ導きます)

② 意味: 係数は、どこから出るか(式の導き方を、1 段ずつ)

grad の係数(1/ρ・1/r・1/(r sinθ))。考え方: 2 章の df = ∇f·dr(少し動いたときの f の変化は、∇f と動いた矢印 dr の内積)を、円柱座標の言葉で 2 通りに書いて、見くらべます。

  1. 動いた矢印 dr を、座標で書く(1 行目)。ρ・φ・z を dρ・dφ・dz だけ変えたときに動く距離は、図 9a の 3 つの辺の長さです。ρ̂ の向きに dρ、ẑ の向きに dz。φ̂ の向きだけは ρ dφ(半径 ρ の円周の上を、角度 dφ[ラジアン]だけ進むと、弧の長さは「半径 × 角度」)。φ の向きだけ、角度の変化が、そのままは長さにならず、半径がかかるのが大事な点です。
  2. f の変化を、変数ごとの偏微分で書く(2 行目の左)。f は ρ・φ・z の関数なので、1 つずつ動かしたときの変化の和 df = (∂f/∂ρ)dρ + (∂f/∂φ)dφ + (∂f/∂z)dz(0 章の偏微分)。
  3. 同じ df を、∇f と dr の内積で書く(2 行目の右)。∇f の ρ̂・φ̂・ẑ の向きの成分を (a, b, c) とおくと(b は、3 行目の (∇f)φ のこと)、内積は、同じ向きの成分どうしの積の和: df = a·dρ + b·(ρ dφ) + c·dz。
  4. 2 通りを比べる(3 行目)。dρ・dφ・dz をどう選んでも 2 つの df は等しいので、dφ の係数どうしを比べると b·ρ = ∂f/∂φ、つまり b = (1/ρ)∂f/∂φ。同じく a = ∂f/∂ρ、c = ∂f/∂z。φ の向きだけ 1/ρ がつくのは、「角度の変化」を「長さの変化」に直すための、半径での割り算です。
  5. 球座標も同じ手順(4〜5 行目)。dr = (dr, r dθ, r sinθ dφ)。θ̂ の向きの辺は、半径 r の経線の弧(長さ r dθ)、φ̂ の向きの辺は、半径 r sinθ の緯線の円の弧(長さ r sinθ dφ)です(図 9b)。同じように比べると (∇f)θ = (1/r)∂f/∂θ、(∇f)φ = (1/(r sinθ))∂f/∂φ。

div の導き方(円柱座標)。考え方: 4 章の定義「div = 小さな箱から外へ出る流束 ÷ 箱の体積」を、図 9a の箱(ρ〜ρ+dρ、φ〜φ+dφ、z〜z+dz)にあてはめます。6 つの面を、向かい合う 2 面ずつの 3 組に分けて、組ごとに「外へ出る正味の流束」Φ を求めます。

  1. 1 つの面を通る流束: 面が小さければ、その上で F はほぼ一様なので、流束 ≈ 〔F の外向きの成分〕×〔面の面積〕(4 章)。なお、大文字の Φ は流束、小文字の φ は方位角(別の量)です。
  2. ρ̂ の向きの組(外の円筒面と内の円筒面。1〜2 行目)。外の面は半径が ρ+dρ なので、面積は (ρ+dρ)dφ dz。内の面の面積は ρ dφ dz。外向きの成分は、外の面で +Fρ、内の面では向きが逆なので −Fρ。合計は、「ρFρ という量」を ρ+dρ と ρ で比べた差 × dφ dz で、差は〔微分 × 幅〕の形なので ≈ ∂(ρFρ)/∂ρ · dρ(0 章の微分の定義)。ρ が微分の中に入るのは、外の面のほうが広い(面積が半径に比例する)からです。
  3. φ̂ の向きの組(φ と φ+dφ の平らな面。3〜4 行目)。どちらの面も面積は dρ dz で同じ。外向きの成分は、φ+dφ の側で +Fφ、φ の側で −Fφ。合計は Fφ の差だけで、≈ ∂Fφ/∂φ · dφ dρ dz。
  4. ẑ の向きの組(上下の面。5〜6 行目)。どちらも面積は ρ dρ dφ で同じなので、差は Fz の差だけ: ≈ ∂Fz/∂z · dz ρ dρ dφ。
  5. 3 組を足して、体積 ρ dρ dφ dz で割る(7〜8 行目)。ρ̂ の組は (1/ρ)∂(ρFρ)/∂ρ(dρ dφ dz が消えて、ρ が分母に 1 つ残る)、φ̂ の組は (1/ρ)∂Fφ/∂φ、ẑ の組は ∂Fz/∂z。3 つの和が、円柱座標の div です。
  6. 省いたこと: 面の上で F が少し変わることや、dρ の 2 次の項は、箱を小さくする極限(dρ・dφ・dz → 0)で、体積に比べて消えます。箱の厳密な体積は (ρ+dρ/2) dρ dφ dz で、ρ dρ dφ dz との差も同じく消えます(上下の面の面積 ρ dρ dφ も、厳密には (ρ+dρ/2) dρ dφ で、同じ)(自作の検算プログラム(非公開) で、小さな箱の流束 ÷ 体積が式と一致することを確かめています)。

球座標の div も、同じ手順です(図 9b の箱。体積は r² sinθ dr dθ dφ)。

  1. 3 組の面の面積: r̂ の組は r² sinθ dθ dφ(半径の 2 乗に比例)、θ̂ の組は r sinθ dr dφ(sinθ に比例。θ と θ+dθ で sinθ の値が違う)、φ̂ の組は r dr dθ(2 面で同じ)。
  2. 面積が変わる向きの組は、「面積に比例する量」を微分の中に入れる(円柱の ρ と同じ理屈)。r̂ の組は ∂(r²Fr)/∂r、θ̂ の組は ∂(sinθ Fθ)/∂θ。φ̂ の組は面積が同じなので、∂Fφ/∂φ だけ。
  3. 体積 r² sinθ dr dθ dφ で割る(最後の行)。r̂ の組: ∂(r²Fr)/∂r · sinθ dr dθ dφ ÷ (r² sinθ dr dθ dφ) = (1/r²) ∂(r²Fr)/∂r。θ̂ の組: ∂(sinθ Fθ)/∂θ · r dr dθ dφ ÷ (r² sinθ dr dθ dφ) = (1/(r sinθ)) ∂(sinθ Fθ)/∂θ。φ̂ の組: ∂Fφ/∂φ · r dr dθ dφ ÷ (r² sinθ dr dθ dφ) = (1/(r sinθ)) ∂Fφ/∂φ。
  4. 3 つを足すと、球座標の div の式(上の「球座標」の式の 3〜5 行目)になります。r² と sinθ が微分の中に入るのは、面積がそれに比例して変わる向きだからです。

rot の導き方(円柱座標の ẑ 成分)。考え方: 5 章の定義「rot の ẑ 成分 = ẑ に垂直な小さな四角のまわりの循環 ÷ 面積」を、ρ〜ρ+dρ、φ〜φ+dφ の小さな四角(図 9a の上の面)にあてはめます。ẑ の向きから見て反時計まわりを正とし、4 つの辺について、辺に沿った線積分 Γ1〜Γ4 を求めます(0 章の線積分: 進む向きの F の成分 × 辺の長さ)。

  1. 辺 1(φ の辺を ρ̂ の向きに。長さ dρ): 進む向きは ρ̂ なので、Γ1 = Fρ dρ。Fρ の値は、この辺の上の φ のもの。
  2. 辺 2(半径 ρ+dρ の円弧を、φ̂ の向きに。長さ (ρ+dρ)dφ): Γ2 = Fφ(ρ+dρ)·(ρ+dρ)dφ。
  3. 辺 3(φ+dφ の辺を、ρ̂ と逆向きに戻る): 進む向きが −ρ̂ なので符号が逆。Γ3 = −Fρ(φ+dφ) dρ。
  4. 辺 4(半径 ρ の円弧を、φ̂ と逆向きに戻る。長さ ρ dφ): Γ4 = −Fφ(ρ)·ρ dφ。
  5. 向かい合う辺を組にする(5〜6 行目)。辺 1 と辺 3 は、Fρ を φ と φ+dφ で比べた差になる: Γ1+Γ3 = −[Fρ(φ+dφ) − Fρ(φ)]dρ ≈ −∂Fρ/∂φ · dρ dφ。辺 2 と辺 4 は、「ρFφ という量」を ρ+dρ と ρ で比べた差: Γ2+Γ4 = [(ρ+dρ)Fφ(ρ+dρ) − ρFφ(ρ)]dφ ≈ ∂(ρFφ)/∂ρ · dρ dφ。ρ が微分の中に入るのは、円弧の長さが半径に比例するから(div と同じ理屈)。
  6. 面積 ρ dρ dφ で割る(7〜8 行目)。(∇×F)z = (1/ρ)[∂(ρFφ)/∂ρ − ∂Fρ/∂φ]。上の円柱座標の rot の 3 行目と一致します。
  7. 省いたこと: ρ̂ 成分・φ̂ 成分も、それぞれ ρ̂ に垂直な四角(φ–z の面)・φ̂ に垂直な四角(z–ρ の面)で、同じ手順で導けます(このページでは、式の検算だけ)。小さな四角の 4 辺の循環 ÷ 面積が、式と一致することは、自作の検算プログラム(非公開) で確かめています(一辺 10⁻³ の四角)。

rot の導き方(球座標の r̂ 成分)。円柱座標の ẑ 成分と同じ手順を、半径 r の球面の上の小さな四角(θ〜θ+dθ、φ〜φ+dφ。図 9b の球面の面)にあてはめます。r̂ の向き(外向き)から見て反時計まわりを正とします(θ̂ × φ̂ = r̂)。四角の辺の長さは、θ の向きの辺が r dθ、φ の向きの辺は緯線の円弧で r sinθ dφ(θ と θ+dθ で、緯線の半径が違うので、長さも違う)。

  1. 辺 1(φ の辺を θ̂ の向きに。長さ r dθ): Γ1 = Fθ(φ)·r dθ。
  2. 辺 2(θ+dθ の緯線の円弧を、φ̂ の向きに。長さ r sin(θ+dθ) dφ): Γ2 = Fφ(θ+dθ)·r sin(θ+dθ) dφ。
  3. 辺 3(φ+dφ の辺を、θ̂ と逆向きに戻る): Γ3 = −Fθ(φ+dφ)·r dθ。
  4. 辺 4(θ の緯線の円弧を、φ̂ と逆向きに戻る): Γ4 = −Fφ(θ)·r sinθ dφ。
  5. 向かい合う辺を組にする(5〜6 行目)。Γ1+Γ3 = −[Fθ(φ+dφ) − Fθ(φ)]·r dθ ≈ −r ∂Fθ/∂φ · dθ dφ。Γ2+Γ4 = r[sin(θ+dθ)Fφ(θ+dθ) − sinθ Fφ(θ)]dφ ≈ r ∂(sinθ Fφ)/∂θ · dθ dφ。sinθ が微分の中に入るのは、緯線の円弧の長さが sinθ に比例するから(円柱の ρ と同じ理屈)。
  6. 面積 r² sinθ dθ dφ で割る(7〜8 行目)。分子には r が 1 つ、分母には r² があるので、r が 1 つ消えて、(∇×F)r = (1/(r sinθ))[∂(sinθ Fφ)/∂θ − ∂Fθ/∂φ]。上の球座標の rot の 1 行目と一致します。
  7. 省いたこと: θ̂ 成分・φ̂ 成分も、それぞれ θ̂ に垂直な四角(φ–r の面)・φ̂ に垂直な四角(r–θ の面)で、同じ手順で導けます(このページでは、式の検算だけ。3 成分とも、直交座標の rot を射影したものと一致することを確かめています)。四角の面積は、厳密には r²(cosθ − cos(θ+dθ)) dφ で、r² sinθ dθ dφ との差は、四角を小さくすると消えます。小さな四角の 4 辺の循環 ÷ 面積が、式と一致することは、自作の検算プログラム(非公開) で確かめています(一辺 10⁻³ の四角)。

③ 具体例(数値)

線電荷の形 F = ρ̂/ρ(4 章の右下の図と同じ場): 円柱座標の式で ρFρ = 1 なので、div = 0(ρ ≠ 0)。点 ρ = 0.8、φ = 0.4、z = 0.1 で、円柱座標の式を数値微分すると 0.000、直交座標の (x, y, 0)/(x² + y²) を数値微分しても 0.000。点電荷の形 F = r̂/r²: r²Fr = 1 なので、div = 0(r ≠ 0)。r = 1.2、θ = 0.7、φ = 0.3 で、球座標の式 0.000、直交座標の (x, y, z)/r³ で 0.000。比べる例 F = ρ̂(大きさ 1 で外向き): div = 1/ρ で、ρ = 0.5 では、円柱座標の式 2.000、直交座標の (x, y, 0)/√(x² + y²) で 2.000。

④ よくある間違い
  • 係数を忘れて、∂Fρ/∂ρ + ∂Fφ/∂φ + ∂Fz/∂z と書かない。上の比べる例 F = ρ̂ では、Fρ = 1 は場所によらないので ∂Fρ/∂ρ = 0 ですが、正しい div は 1/ρ(外へ広がる分、外の面のほうが広く、多く出る)。
  • ∇²A(ベクトルのラプラシアン)は、円柱座標・球座標では、成分ごとの ∇² にはなりません(単位ベクトル ρ̂・φ̂ などが場所によって向きを変えるため)。このページの 9 章の ∇² は、スカラー場の ∇²f だけです。
  • θ と φ の役割(どちらが z 軸からの角か)は、本によって逆のことがあります。式を写すときは、その本の約束を確かめます。

10. マクスウェルの方程式へ(このコーナーの道具との対応)

ひとことで: マクスウェルの方程式は、これまでの 4 つの道具(div・rot・2 つの定理・恒等式)だけで読めます。4 本の式を、1 本ずつ、「どの道具で・何を言っているか」に分けて読みます。

上の式は、真空中・SI 単位の微分形です。1 本ずつ読みます。

  1. ∇·E = ρ/ε₀(4 章の div): 電場の湧き出しは、電荷のあるところにある(この章の ρ は電荷密度で、9 章の半径 ρ とは別)。ρ > 0(正の電荷)なら湧き出し、ρ < 0 なら吸い込み、ρ = 0(電荷のない場所)なら 0。比例の定数が 1/ε₀。
  2. ∇·B = 0(4 章の div): 磁場には、湧き出しも吸い込みもない。7 章の ∇·(∇×A) = 0 から、B = ∇×A と書けることと同じ内容です(逆向き ∇·B = 0 ⇒ ∇×A の形に書ける、は、全空間などふつうの領域で成り立ちます)。
  3. ∇×E = −∂B/∂t(5 章の rot): 磁場が時間とともに変わるところには、電場の渦がともなう。右辺が 0(磁場が変わらない)なら ∇×E = 0 で、(閉じた道を、領域の中で 1 点に縮められる領域では)E = −∇V と書けます(3・7 章)。
  4. ∇×B = μ₀J + μ₀ε₀ ∂E/∂t(5 章の rot): 電流と、電場の時間変化(変位電流)があるところには、磁場の渦がともなう。両辺の div をとると、∇·(∇×B) = 0 から、電荷の保存の式が出ます(マクスウェルのコーナーの 4 章)。
  5. 単位の確かめ(自作の計算): どの式も、両辺の単位がそろいます。① ∇·E は V/m²、ρ/ε₀ は (C/m³)/(F/m) = V/m²。③ ∇×E は V/m²、∂B/∂t は T/s = (V·s/m²)/s = V/m²。④ ∇×B は T/m、μ₀J は (T·m/A)(A/m²) = T/m、μ₀ε₀ ∂E/∂t は (s²/m²)(V/(m·s)) = V·s/m³ = T/m(T = V·s/m²)。
  6. 読み方の注意: どれも同じ時刻・同じ点の場の関係を表す式です。「時間変化が渦をつくる(原因と結果)」と読む説明も多いのですが、場の源は電荷と電流で、この 2 本は因果を表さない、とする見方もあり、異論あり。

積分の形(4 本)は、次のとおりです。8 章の 2 つの定理(ガウス・ストークス)で、微分の形と行き来できます(その 1 段ずつの導き方は、マクスウェルのコーナーの 6 章)。

どの式を、どの章の道具で読むか

左の列は、マクスウェルの方程式のコーナーの、その式の章へのリンクです。

式使う道具章読み方
∇·E = ρ/ε₀(電場のガウスの法則)div・ガウスの定理4・8 章電場は、電荷から湧き出す。積分の形は、閉じた面から出る電場の流束 = 中の電荷 ÷ ε₀
∇·B = 0(磁場のガウスの法則)div・ガウスの定理・∇·(∇×A) = 04・7・8 章磁場には湧き出しがない。B = ∇×A と書けることと同じ(7 章)
∇×E = −∂B/∂t(ファラデーの法則)rot・ストークスの定理・∇×(∇φ) = 05・7・8 章磁場が変わると、電場の渦ができる。静電場(右辺 0)なら、E = −∇V と書ける(3・7 章)
∇×B = μ₀J + μ₀ε₀∂E/∂t(アンペール・マクスウェルの法則)rot・ストークスの定理・∇·(∇×A) = 05・7・8 章電流と変位電流に、磁場の渦がともなう。両辺の div をとると、電荷の保存の式
電磁波の波動方程式(導出)∇×(∇×A) = ∇(∇·A) − ∇²A・ラプラシアン6・7 章ファラデーの法則の rot をとり、アンペール・マクスウェルの法則を入れる
エネルギーの流れ(ポインティングの定理)∇·(E×H) = H·(∇×E) − E·(∇×H)・ガウスの定理7・8 章場のエネルギーの収支(場のエネルギーの減り = 表面から出る流れ + 電荷に渡す仕事)
導線・点電荷のまわりの場円柱座標・球座標の div・grad9 章線電荷・点電荷の場の div が、電荷の外で 0 になる

それぞれの式が、どんな実験・考え方から来たか、波動方程式の導出は、マクスウェルの方程式の解説コーナーで扱います(ポインティングの定理の導出は、7 章)。

出典と確認の状況・省略したこと

このページは、Claude(Anthropic の AI)の支援で作っています(Powered by Claude)。ベクトル解析の定義・恒等式・積分定理は、数学の標準的な結果です。説明の文章・例・図は、このページのために自作したもので、ほかの本・資料の文章・図・例題を写していません。種別: 確認= その資料の該当部分を読んで、式・主張を照合した/書誌のみ= 存在は確かめたが、本文は読んでいない/自作の計算= このサイトのコードで計算・検算した/Claude の知識= 式の出どころ/未確認= その見方を述べた資料を、まだ確かめていない。

  • Claude の知識自作の計算 0 章(おさらい)の、微分(割線の傾きの極限)・偏微分・定積分(長方形の和の極限)・微分積分学の基本定理・線積分・面積分(流束)の定義と、例の数値(x² の微分と積分、渦の場 (−y, x) と勾配の場 (2x, 2y) の線積分、傾いた面の磁束)は、高校〜大学 1 年の標準的な数学です。説明・例・図は、このページのために自作したもので、ほかの本・資料の文章・図・例題を写していません(実際に参照した資料はありません)。例の数値は calcfig.js で計算し、手計算の答え(2 + h・(n−1)n(2n−1)/6n³・1/3・1・0・2π・2・B S cos θ)と一致することを 自作の検算プログラム(非公開) で確かめています。
  • Claude の知識自作の計算 grad・div・rot・∇² の直交座標での定義、∇×(∇φ) = 0・∇·(∇×A) = 0・∇×(∇×A) = ∇(∇·A) − ∇²A・∇·(E×H) = H·(∇×E) − E·(∇×H) の成分での導出、ガウスの定理・ストークスの定理、9 章の体積要素による係数の導き方(6 面の流束 ÷ 体積)、9 章の rot の導き方(円柱座標の ẑ 成分・球座標の r̂ 成分。小さな四角の 4 辺の循環 ÷ 面積)、各章の具体例と図(7a・7b・9a・9b を含む)。すべて 自作の検算プログラム(非公開) で、数値微分・数値積分と解析解の一致を確かめています。
  • 確認 Wikipedia(英語版)“Vector calculus identities”(rot の直交座標の成分、∇×(∇f) = 0、∇·(∇×F) = 0、∇·∇f = ∇²f、curl of curl ∇×(∇×A) = ∇(∇·A) − ∇²A、∇·(A×B) = (∇×A)·B − A·(∇×B))。https://en.wikipedia.org/wiki/Vector_calculus_identities(2026-10-11 閲覧)
  • 確認 Wikipedia(英語版)“Divergence”(div = 小さな閉曲面から出る流束 ÷ 体積の極限、正 = 湧き出し・負 = 吸い込み)。https://en.wikipedia.org/wiki/Divergence(同)
  • 確認 Wikipedia(英語版)“Curl (mathematics)”(rot = 小さな閉曲線の循環 ÷ 面積の極限、流れの速さの rot = 局所の角速度の 2 倍、流れに置いた小さな回る物体の解釈)。https://en.wikipedia.org/wiki/Curl_(mathematics)(同)
  • 確認 Wikipedia(英語版)“Divergence theorem”(外向きの法線、F が C¹、境界が区分的に滑らか)。https://en.wikipedia.org/wiki/Divergence_theorem(同)
  • 確認 Wikipedia(英語版)“Stokes' theorem”(境界の向きと法線を右手の規則で組にする)。https://en.wikipedia.org/wiki/Stokes%27_theorem(同)
  • 確認 Wikipedia(英語版)“Del in cylindrical and spherical coordinates”(9 章の円柱座標・球座標の grad・div・rot・∇²、変位 dl = dρ ρ̂ + ρ dφ φ̂ + dz ẑ / dr r̂ + r dθ θ̂ + r sinθ dφ φ̂、体積要素 ρ dρ dφ dz / r² sinθ dr dθ dφ。θ は極角・φ は方位角の約束)。https://en.wikipedia.org/wiki/Del_in_cylindrical_and_spherical_coordinates(同)
  • 確認 Wikipedia(英語版)“Maxwell's equations”(微分形・SI・真空: ∇·E = ρ/ε₀、∇·B = 0、∇×E = −∂B/∂t、∇×B = μ₀(J + ε₀∂E/∂t))。https://en.wikipedia.org/wiki/Maxwell%27s_equations(同)
  • 確認 Wikipedia(英語版)“Poynting's theorem”(導出で ∇·(E×H) の恒等式を使うこと、微分形 −∂u/∂t = ∇·S + J·E の各項の意味)。https://en.wikipedia.org/wiki/Poynting%27s_theorem(同)
  • Claude の知識未確認 10 章の「マクスウェルの方程式の ③・④ は、同時刻の場の関係で、因果(原因と結果)を表さない」という見方(異論あり)。教科書の多くは「磁場の変化が電場をつくる」と説明します。この見方を述べた資料は、まだ確かめていません。
  • 確認 Wikipedia(英語版)“Electric potential”(静電場で E = −∇V、一般に E = −∇V − ∂A/∂t、ポアソン方程式 ∇²V = −ρ/ε₀)。https://en.wikipedia.org/wiki/Electric_potential(同)
  • 書誌のみ MIT OpenCourseWare 18.02 Multivariable Calculus(Fall 2007, D. Auroux)。発散定理・ストークスの定理の回の講義ノートがあることを確かめたが、本文は読んでいない。https://ocw.mit.edu/courses/18-02-multivariable-calculus-fall-2007/
  • 書誌のみ R. P. Feynman ほか『The Feynman Lectures on Physics』Vol. II, 2〜3 章(ベクトル場の微分・積分)。オンライン版(feynmanlectures.caltech.edu)は、このときの取得で読めず(HTTP 403)、本文は確認していない。D. J. Griffiths『Introduction to Electrodynamics』1 章(ベクトル解析)も、書誌のみ。

省略したこと(大きさつき)

  • 1〜7 章の静止図は、3 次元の場の z = 0 の断面だけです(8・9 章の斜めの図と、3D の動く絵を除く)。div の四角は、z 方向の面の出入りが 0 になる例を選んでいます(4 つの例すべてで、z = 0 の面の上で Fz = 0)。
  • 数値の検算は、中心差分(刻み 10⁻⁴〜10⁻³、誤差は刻みの 2 乗程度 ≈ 10⁻⁸〜10⁻⁶ の相対誤差)と、中点則の数値積分(分割 20〜2000)です。ページに出す数値は、3 けたで丸めています。
  • 数学的な厳密さ(関数の滑らかさの条件・定理の証明)は、要点だけです。7 章の証明は、2 階の偏微分が連続であることを仮定しています。
  • 9 章の体積要素の図は、見やすいように dρ・dφ などを大きく描いた模式です(式の導出は、それらを 0 に近づけた極限)。円柱・球座標のベクトルのラプラシアンは、検算していないので載せていません。
  • 7 章の 7-3 の E・H は、式の検算のための滑らかな例の関数で、マクスウェルの方程式を満たす電磁場ではありません。
  • 0 章(おさらい)は、高校数学の復習です。極限の厳密な定義(ε-δ)・積分できる条件(連続など)・線積分の道の滑らかさの条件は、省きました(例は、すべて滑らかな関数と、区分的に滑らかな道です)。偏微分の順序の交換は、2 階の偏微分が連続なときの結果として使っています。
  • 式の下の「ここでの記号」は、記号の意味と単位を、1 項目 1 行で書いたもので、定義の厳密な全文ではありません。同じ記号で意味が変わるもの(ρ・φ・V・A・θ)は、項目を分けて、違うと書いています。
  • 間違いがあれば、教えてください。